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【アルバム】The Spaghetti Incident?│Guns N’ Roses

目次

パンクルーツを辿るカバーアルバム

当サイトの評価
[★☆☆☆]

  • カバーアルバム(通算5作目)
  • リリース_1993年
  • 作品名_The Spaghetti Incident?

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Guns N’ Rosesは、1991年に2部作『Use Your Illusion I・Ⅱ』を同時リリースし、世界的なモンスターバンドとしての地位を確立しました。

ところがツアーの長期化とメンバー間の不仲によって、新作の制作は停滞します。

そのなかでバンドの原点である70年代パンク/グラム・ロックへの敬意を示しつつ、ファンの期待を繋ぎ止める目的で企画されたのが本作The Spaghetti Incident?でした。

本作は全曲がカバーという異色作で、オリジナルの新曲は一切ありません。あくまでも企画盤色が強く、荒々しい演奏とタフな選曲を主軸とした作品のため、バンド本来の多面的なハードロック路線は影を潜めています。

現在では、コアファンがルーツを探るための一作として語られることが多いでしょう。

The Spaghetti Incident?のエピソード

アルバムタイトルの“スパゲッティ・インシデント”とは、ツアー中にダフ・マッケイガンとスティーヴン・アドラーが起こした小さなトラブルを指す、いわば内輪ネタ。

スティーヴンがドラッグをスパゲッティ容器に隠していたことが発覚し、訴訟の中で「スパゲッティ事件(The Spaghetti Incident)」と皮肉られたのが由来です。

そうした経緯もあってか、作品全体に真面目さや攻撃性よりも、遊び心や企画イベント的な雰囲気が漂っています。

アルバムの制作もダフやスラッシュの主導によって行われ、アクセル・ローズの存在感は比較的薄いとも言われています。Guns N’ Roses名義としては珍しく、ダフがリードボーカルを務める楽曲も複数、見受けられます。

なお、本作のラストにはチャールズ・マンソン作の『Look at Your Game, Girl』が隠しトラックとして収録されており、被害者遺族からの抗議やレーベル内部の混乱を引き起こしました。

結果としてプロモーションは縮小され、全米ビルボード4位に留まるなどセールス面では前作までの勢いを維持できませんでした。

それでも、「パンク/ハードロックへの回帰」という明確なコンセプトは、当時のファンに新鮮な驚きを与えました。アルバムは発売から約2か月でRIAAプラチナディスクを獲得し、商業的には一定の成功を収めています。

The Spaghetti Incident?の収録曲

  1. Since I Don’t Have You
  2. New Rose
  3. Down on the Farm
  4. Human Being
  5. Raw Power
  6. Ain’t It Fun
  7. Buick Makane(Big Dumb Sex)
  8. Hair of the Dog
  9. Attitude
  10. Black Leather
  11. You Can’t Put Your Arms Around a Memory
  12. I Don’t Care About You(Look at Your Game, Girl)

The Spaghetti Incident?の聴きどころ

本作の魅力は、Guns N’ Roses流の解釈で蘇ったパンク・クラシックにあります。

オープニングの『Since I Don’t Have You』では、50年代ドゥーワップをスラッシュのギターとアクセルのハイトーンで豪快に塗り替え、意外性の高い幕開けを演出します。

続く『New Rose』や『Attitude』では、原曲への敬意を残しつつも、分厚いギターとタイトなリズムで現代的なヘヴィネスを付加。中盤の『Ain’t It Fun』ではハノイ・ロックスのマイケル・モンローをゲストに迎え、哀愁漂うコーラスワークが際立っています。

一方、『Hair of the Dog』や『Raw Power』では、スラッシュのワイルドなリフとダフ・マッケイガンのラフなボーカルが前面に出ており、ガンズらしい荒削りかつ攻撃的なサウンドが楽しめます。

本編の締めくくり『I Don’t Care About You』の終盤で突如フェードインする隠しトラックは、前述の通り大きな波紋を呼びましたが、バンドの反骨精神と挑発的姿勢を象徴する仕掛けとも言えるでしょう。

総じて、The Spaghetti Incident?はガンズのルーツを垣間見せつつ、同時にバンドが抱えていた混乱や実験精神をも映し出す作品です。

勢い任せのカバーアルバムながら、パンクスピリットとロックンロールの荒々しさを表現した一枚として、今なお一定の存在感があります。

この記事を書いた人

一生の中で、このアルバムに出会えてよかった

rock-streetsでは、わたしの大切なアルバムを、わたしの言葉で伝えています。
ロックであれ、ヘヴィメタであれ、感情を揺さぶる音楽は「芸術」と考えています。

Rockに限らず、クラシックも紹介していきます

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