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【名盤】Use Your IllusionⅠ&Ⅱ│Guns N’ Roses

目次

幻想と現実を描いた多面的な2部作品

当サイトの評価
[★★★☆]

  • 2nd,3rdアルバム(スタジオ録音として)
  • リリース_1991年
  • 作品名_Use Your IllusionⅠ&Ⅱ

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Guns N’ Rosesのデビュー作となった『Appetite for Destruction』は、全米で大ヒットを記録し、彼らは一気にロックスターへと駆け上がりました。

“街の不良”から、”世界のロックスター”へ

多くのファンが次回作に大きな期待を寄せる中、アクセル・ローズは早くから新しいアルバムの構想を描いていました。デビュー時に見せた過激なパフォーマンスや暴言といったイメージからは想像し難い、音楽に対する純粋なこだわり、そして音楽的造詣の深さ。

アクセル・ローズが求めていたのはデビュー作の延長ではなく、自身が内包している広大な音楽世界だったのです。

そして1991年、Guns N’ RosesはアルバムUse Your IllusionⅠ(16曲収録)とUse Your IllusionⅡ(14曲収録)を同日にリリース。

あわせて30曲にも及ぶこの2作は、Guns N’ Rosesらしい荒々しさや攻撃性を秘めながら、『Appetite for Destruction』のようなキャッチーでストレートなロックとは違う、多面的な音楽世界が描かれた作品となりました。

Use Your IllisionⅠ

Use Your llusionⅠは、デビュー作の雰囲気に近く、ストレートでエネルギッシュな楽曲が収録されています。冒頭を飾る『Right Next Door to Hell』や『Back Off Bitch』といった曲はいわゆる”Rock寄り”で、当時のGuns N’ Rosesのイメージそのもの。

一方で、『Don’t Cry』や『November Rain』といったバラードも収録されており、攻撃性だけでなく情緒的な側面も見せています。

Use Your IllisionⅡ

Use Your llusionⅡは、内省的かつ社会的なテーマが前面に出たアルバムです。『Civil War』は戦争と暴力に対する反戦的な楽曲で、人間社会の分断や権力者批判、心の中にある対立までを象徴的に描いています。

『Yesterdays』や『Estranged』では、アクセルの内面を反映したような、過去や孤独。そして、自分を取り戻そうとする長い精神的旅路を表現。

アクセル・ローズの繊細さを感じる作品です。


この2作を通して、Guns N’ Rosesは単なる“暴れる不良ロックバンド”ではなく、攻撃性と内面的な苦悩の両方を音楽で描けるバンドであることを証明しました。

Use Your Illusionのエピソード

『Appetite for Destruction』で世界的ブレイクを果たしたGuns N’ Rosesは、その後も長期ツアーとファンの熱狂の中で活動を続けましたが、バンド内部では少しずつ歪みが生じ始めていました。

バンド内ではドラッグが蔓延り、とくにドラムのスティーブン・アドラーは、薬物依存による演奏の不安定さからレコーディングの継続すら不可能になり、最終的に解雇されます。代役として、ザ・カルテットなどで活動していたマット・ソーラムが加入。

バンドは音楽的な幅を広げる一方で、結束はさらに揺らいでいきます。

そして、中心人物アクセル・ローズの芸術志向はますます強まり、メンバーとの間には温度差も生まれていました。制作期間中にはリハーサルやレコーディングの遅延がくり返され、バンド内のコミュニケーションは次第に希薄になっていきます。

アクセルの孤立は顕在化し、やがてスタッフやメンバーへの怒りや精神的な不安定さが表面化。

このような状況の中で、1991年9月、バンドは前代未聞となる新作アルバムの2枚同時リリースを敢行。Use Your Illusion I(16曲)とUse Your Illusion II(14曲)は、あわせて30曲におよぶ大作であり、ハードロック、ピアノバラード、ブルース、さらにはオーケストラ風の編曲まで、多彩な楽曲が創作されました。

この2作は、デビュー作の延長線を期待していたファンを戸惑わせながらも、同時にGuns N’ Rosesというバンドの幅広い音楽的志向を印象づける作品となりました。

バンド内の軋轢

Use Your Illusion I・IIの2作同時リリースは、アクセル・ローズの構想に基づくものでしたが、バンド内は必ずしも積極的な姿勢ではありませんでした。

また、スラッシュをはじめとするメンバーは、『Appetite for Destruction』のようなストレートなロック路線を継続すべきと考えており、大規模かつ複雑なアルバムの音楽性にも抵抗があったようです。

ディジー・リード

このアルバムから正式参加したキーボードのディジー・リードは、後年バンドが幾度となくメンバー交代を重ねるなかでも唯一、アクセル・ローズとともに残り続けた存在です。

当時の中心メンバーのひとりスラッシュが1996年に脱退し、2016年に奇跡の復帰を果たすまでの20年間も、ディジーはバンドに残り続けました。

Use Your IllusionⅠの収録曲

  1. Right Next Door to Hell
  2. Dust N’ Bones
  3. Live and Let Die
  4. Don’t Cry (Original)
  5. Perfect Crime
  6. You Ain’t the First
  7. Bad Obsession
  8. Back Off Bitch
  9. Double Talkin’ Jive
  10. November Rain
  11. The Garden
  12. Garden of Eden
  13. Don’t Damn Me
  14. Bad Apples
  15. Dead Horse
  16. Coma

PickUp:Right Next Door to Hell

アルバム冒頭を飾るこの曲は、『Welcome to the Jungle』にも通じる攻撃性をもった、純粋な怒りを感じるナンバーです。

イントロから疾走するギターとベース、そしてアクセル・ローズの金属的なボーカル。抑制の効かない暴力性と、生々しい衝動を秘めたサウンド。

タイトルの「地獄の隣」とは、実際にアクセルが暮らしていた住居の隣人とのトラブルが元ネタとされています。社会批判ではなく、私怨から来る攻撃性。

「Guns N’ Rosesは変わった」と評されたUse Your Illusionの中でも、最も“昔ながらのGuns N’ Rosesらしい”攻撃的な楽曲です。

PickUp:Don’t Cry (Original)

Use Your Illusionに収録された本格的バラードの1曲。

『November Rain』ほどの壮大さはありませんが、イントロからラストまで一貫して叙情的な旋律が展開されます。初めて聴いた人の心にも残る名バラードです。

アクセル・ローズはこの楽曲の前半と後半で、明確に声質を使い分けています。前半はナチュラルな低音ボイス、ギター・ソロ後の後半では、彼特有のハイトーン・ボイスへと移行し、感情の振れ幅を見事に表現しています。

失恋の痛みや絶望の中でも「泣かないで」と、別れゆく恋人に語りかける。アクセルの優しさが垣間見えるバラードです。

下記は収録曲『Don’t Cry』の一節です。

“And Don’t you cry tonight, There’s a heaven above you baby”

(泣かなくていい。お前のうえには、ちゃんと幸福が広がっているのだから・・)

Guns N’ Roses『Use Your IllusionⅠ』(1991, Geffen Records)

もうひとつのDon’t Cry

同時リリースされたUse Your IllusionⅡにも、Don’t Cryの別バージョンが収録されています。サビ以外の歌詞、ボーカルの旋律も異なるバージョンです。ぜひ、お聴きください。

Use Your IllusionⅡの収録曲

  1. Civil War
  2. 14 Years
  3. Yesterdays
  4. Knockin’ on Heaven’s Door
  5. Get in the Ring
  6. Shotgun Blues
  7. Breakdown
  8. Pretty Tied Up
  9. Locomotive
  10. So Fine
  11. Estranged
  12. You Could Be Mine
  13. Don’t Cry(Alt. Lyrics)
  14. My World

PickUp:Yesterdays

Use Your Illusionの中でも、静かな余韻を残す楽曲。

シンプルかつ哀愁を秘めたエレキギターから始まるイントロは、派手さよりも郷愁や内省を感じさせる雰囲気です。そして、歌詞の中でくり返される”Yesterdays”という言葉には、とくに感情が込められています。

「過去にとらわれない」というメッセージがストレートに綴られた歌詞も印象的で、暴力的なエネルギーに満ちた前作『Appetite for Destruction』とは異なる、バンドの成熟した側面が見える1曲です。

Guns N’ Rosesの中では、それほど人気が高い曲ではありませんが、名曲です。

この記事を書いた人

一生の中で、このアルバムに出会えてよかった

rock-streetsでは、わたしの大切なアルバムを、わたしの言葉で伝えています。
ロックであれ、ヘヴィメタであれ、感情を揺さぶる音楽は「芸術」と考えています。

Rockに限らず、クラシックも紹介していきます

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