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【アルバム】Tapestry│Carole King

目次

友情、恋愛、別れ。人生を自然体で描いた大名盤

当サイトの評価
[★★★★]
[名盤永遠の名盤]

  • 2ndアルバム
  • リリース_1971年
  • 作品名_Tapestry(邦_つづれおり)

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キャロル・キングは、1958年頃、16歳の若さでデビューし音楽活動をスタートさせました。

1960年代を通じて、彼女は後に夫となるジェリー・ゴフィンと共に、主に他のアーティストへの楽曲提供を目的とした作詞・作曲活動に専念していきます。そして1970年、1stアルバム『Writer』を発表し、ソロ・シンガーとしてのキャリアを本格的に始動させました。

Tapestryは、その翌年にリリースされた2作目のアルバムです。この作品は、友情や恋愛、そして別れなど、人生における“人との関わり”が描かれています。

キャロルは幼少期に両親の離婚を経験し、長年にわたり創作を共にしてきたパートナー、ジェリー・ゴフィンとも、Tapestryのリリース時にはすでに別れを迎えていました。

このアルバムに描かれているのは、単なる幸福感や人生の充実さだけではありません。悲しみや喪失、そして孤独といった感情や人間の温かさも溶け込んでおり、まさに哀愁のある人生が織り込まれているようです。

家庭的な空間で録音されたかのような温かさと、時代を超える普遍的なメロディ。そして、過剰な装飾を排した、ピアノと声を引き立てたシンプルな構成。

ケイト・ブッシュのような天才性ではなく、人の心に自然に入り込むような素朴感あふれる作品です。

下記は収録曲『You’ve Got a Friend』の一節です。

“Winter, spring, summer or fall, All you have to do is call”

“And I’ll be there, You’ve got a friend”

(冬でも春でも、夏でも秋でも。あなたは、電話をかけるだけでいいの)

(すぐにそばに行くわ。あなたには“友だち”がいるのよ)

出典:Carole King『Tapestry』(1971, Ode Records)

Tapestryのエピソード

1971年2月、キャロル・キングはアルバムTapestryをロサンゼルスのA&Mスタジオで完成させました。この作品は、キャロルにとってソロとしての2枚目のアルバムであり、彼女自身がピアノを弾き語りながら、豊かな作曲力と包容力ある歌声を前面に押し出した初の本格的作品とも言えます。

本作に収録された楽曲の多くは、もともと彼女がゴフィン&キング名義(作詞:ジェリー・ゴフィン/作曲:キャロル・キング)で他のアーティストに提供したナンバーや、その後のソロ作業で書き下ろしたものが含まれています。

『Will You Love Me Tomorrow』『A Natural Woman』などの楽曲は、先に他の歌手によってヒットを記録していましたが、本作ではキャロル自身の歌唱によるセルフカバーとして収録され、新たな魅力を描いています。

アルバムのリリース直後から、Tapestryは世界中で大きな反響を呼びました。

1971年のグラミー賞では、最優秀アルバム賞を含む主要4部門を受賞。全米チャート1位を15週連続で記録し、その後も6年以上にわたりチャートイン。現在までに3,000万枚以上のセールスを記録したと言われています。

Tapestryの収録曲

  • I feel the earth move
  • So Far Away
  • It’s Too Late
  • Home Again
  • Beautiful
  • Way Over Yonder
  • You’ve Got a Friend
  • Where You Lead
  • Will You Love Me Tomorrow?
  • Smackwater Jack
  • Tapestry(つづれおり)
  • (You Make Me Feel Like) A Natural Woman
邦題について

「つづれおり(Tapesty)」を除いては邦題の記載を割愛し、原題のみを掲載しています。レーベルが独自につけたほとんどの邦題は、一般に極めて質が悪く作品の本質を反映していないためです。

PickUp:Home Again

ピアノのイントロの後、「ときどき思う。もう私に安らげる場所はなくなってしまったのかも。」という歌詞から始まるHome Again。

心の拠り所を失い、人生の不安や孤独に包まれた辛い心情が描かれています。そして、希望と癒し、温かさを切望しながら「もう一度、家(拠り所)に帰りたい」と歌います。

全体を通して素朴なピアノが美しく、特に中間部、ドラムパートの導入に続くピアノソロは絶品。心の奥底で揺れていた感情が溢れ出すような瞬間です。

バラードにより過ぎず、自然な力強さも感じさせる楽曲。

“I really need someone to talk to, and nobody else“

“Knows how to comfort me tonight”

(わたしには誰か話せる人が必要なのに)

(今夜のわたしは、どうすれば癒せるの)

出典:Carole King『Tapestry』(1971, Ode Records)

PickUp:Tapestry

エレキピアノのような音色で始まる『Tapestry』。グランドピアノとは別にエレクトリック・ピアノが重ねられており、アルバムの他の楽曲とは少し違う雰囲気を持っています。

キャロルのボーカルは、素朴でありながら情緒表現が豊か。

この曲では、メロディに対してわずかに“走る”箇所もありますが、それがかえって感情の高まりを生々しく伝え、楽曲の魅力を引き立てています。

歌詞では、「夢を掴めなかった人」やかつて出会った「死神のような男」が登場し、これまで歩んできた人生が、一枚の“つづれおり”のように描かれています。

もっと聴いていたいのに・・

余韻を残したまま短いピアノのアウトロで『Tapestry』は幕を閉じます。

完結しない物語

『Tapestry』は、収録曲の中でも特にストーリー性が強く、歌詞全体が一篇の物語のように語られています。

ラストでは、“つづれおり”の糸がほぐれ、死神のような男が「わたしを迎えにきた」と語る場面で幕を閉じます。

もっと聴いていたいのに・・

この曲を聴くたび、いつもそう感じてしまうのです。

おすすめの聴きかた

Tapestryはアルバム1枚で完結している名盤です。聴くときには1曲目からラストまで「通し」で聴くことをお勧めします。歴史的名盤のほとんどは、アルバム単位で作品が完結しており、映画を観るように「通し」で聴くのが基本です。

当サイトでは、収録曲から1~2曲のみを紹介する方針のため、前章では「Home Again」と「Tapestry」を取り上げましたが、実際には本作に収められた楽曲のほとんどが、それぞれ単独でも成り立つクオリティを持っています。

ぜひ、アルバム全体を何度もくり返し聴いてみてください。

キャロル・キングのボーカルは素朴でありながら、力強さも秘めているのですが、スピード感や激しさとは異なるため、一般的なロックのように音圧や躍動感を重視したリスニング環境でなくても、十分に作品の本質を感じることができると思います。

あとがき(Tapestry)

Tapestryは、わたしの“人生のTOP5”にランクインする程、大切に想っているアルバムです。

洋楽を聴き始めたころ、わたしはなぜか「女性シンガー」のアルバムを手に取ることがありませんでした。どこかで敬遠していたのだと思います。でもこのTapestryと出会ってから、そんな偏見は無くなりました。

本文でも何度か使いましたが、キャロル・キングのボーカルや楽曲には、“素朴さ”が強く感じられます。過剰に飾ることなく、自然体で心情を表現するアーティストです。

自宅で撮影されたようなアルバムジャケットも、その“素朴さ”を象徴しています。窓辺に座り、裸足でくつろぐキャロルの姿には、作品そのものと通じ合う人間的な温かみがあります。

キャロル・キングが自ら歌い手となり、歴史に残る大名盤となったTapestry

あなたにとっても「聴き継がれるアルバム」になれば嬉しいです。


キャロル・キングはソロアーティストになる前、当時の夫ジェリー・ゴフィンとともに「ゴフィン&キング」として活動し、他のアーティストに提供した楽曲の多くがヒットを記録しました。

あのジョン・レノンも、当時の彼らについてこう語っています。

“In the early days, Paul and I… we wanted to be the Goffin & King of England, you know.”

(初期のころ、ポールと僕は……イギリスのゴフィン&キングになりたかったんだよ、分かるだろ?)

出典:John Lenon (early 1960s interview)

この記事を書いた人

10代後半から洋楽Rockを聴いています。
ロックであれ、ヘヴィメタであれ、感情を揺さぶる音楽は「芸術」と考えています。
ピアノを習っていた時期もありクラシックも好きです。

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