【名盤】Generation X(ジェネレーションX)

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[★★★☆]

  • 1stアルバム
  • リリース_1978年
  • 作品名_Generation X

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目次

パンク終焉期の均整のパンクアルバム

ジェネレーションXのデビュー作Generation Xは、ロンドン・パンクの熱狂がピークを過ぎた時期、1978年リリースの作品です。

同年1月にはパンクの象徴的存在、セックス・ピストルズが解散し、音楽シーンはすでに「ニュー・ウェイヴ」へと移行しつつありました。

本作は、バンド自身も明確にパンクとして制作し、“パンク・アルバムとして”リリースされていますが、従来のパンクと比較するとサウンドははるかに整理され、ベースやギターはハードロックのように機能しています。

パンクというジャンル

パンクとは、“ギターがあればロックはできる”という思想のもと、技巧や音楽的構成を排したスタイルです。そして、反体制的でストレートな歌詞が基本です。

ビリー・アイドルのボーカルはパンクを踏襲しているものの、演奏面はストレートなハードロックの系統。録音状態は音圧が保たれており、パンク特有の“軽さ”も感じられません。

さらに最終トラック『Youth Youth Youth』では、後半に3分20秒を超えるギターソロが組み込まれています。反技巧・反構造的なパンクにとって、長尺なギターソロを演奏するのは異質。

パンクを愛するバンドが、パンクという枠組みに留まることを拒んだような印象すら感じます。

本作は、ロンドン・パンク・ムーブメントの終焉期に生まれた、均整のとれたパンク・アルバムとして位置づけられる作品です。

Generation Xのエピソード

1978年3月、ジェネレーションXはデビューアルバムGeneration XをChrysalis Recordsからリリースしました。

本作は、セックス・ピストルズ解散直後の終焉期に登場した“第2世代パンク”の代表作であり、同年のロンドン・パンク・シーンに新たな方向性を示した作品です。

レコーディングは1977年末から1978年初頭にかけて、ロンドンのTW Studiosで行われました。プロデューサーはMartin Rushent。

当時のメンバーは、ビリー・アイドル(Vo)、トニー・ジェイムス(B)、ボブ・アンドリュース(G)、マーク・ラフハースト(Dr)の4人構成です。

録音は短期間で行われ予算も限られていましたが、全体の音像は密度が高く、ガレージ的な一体感と音圧が特徴的です。

メンバーはピストルズのような破壊衝動ではなく、「パンクをポップの形式に昇華させる」という意識を持って臨んでいたようで、本作Generation Xではリズムとメロディの均衡が重視されました。

アルバムには、シングルとしても人気の高い『Ready Steady Go』『Your Generation』が収録され、どちらもテレビ番組で演奏されています。特に、『Ready Steady Go』は1978年2月にシングルとして発表され、英国シングルチャートで最高47位を記録しています。

本作Generation Xは、パンク終焉期における過渡期的な名作として、今なお語り継がれる作品です。

Generation Xの収録曲

  • From the Heart
  • One Hundred Punks
  • Listen
  • Ready Steady Go
  • Kleenex
  • Promises Promises
  • Day By Day
  • The Invisible Man
  • Kiss Me Deadly
  • Too Personal
  • Youth Youth Youth

PickUp:From the Heart

アルバム冒頭を飾る『From the Heart』は、タイトルどおりストレートな情熱を込めたナンバーです。本作Generation Xを象徴するように、序盤から一気に疾走感を生み出しています。

演奏は若々しく開放感にあふれ、コード進行とボーカルのメロディも明確。ビリー・アイドルのボーカルが“パンク”の生命感を与えています。

この曲の構成は、典型的なパンクの単調さから一歩踏み出しており、サビの展開には軽いポップ感さえあります。

PickUp:Youth Youth Youth

アルバムの最後を飾る『Youth Youth Youth』は、他の楽曲と同様にストレートなロック・ナンバーです。

ただし構成には独自の面白さがあり、ベースの動きが特に活発です。サビの「Youth Youth Youth」というコーラスでは、楽器隊が衝動を溜め込むような雰囲気を帯びています。

そして、1分30秒あたりからギターが登場を伺うように断片的に姿を見せ、2分40秒以降は前面に立って、エンディングまで自由なソロを展開します。

パンク・アルバムで聴かれるギターソロは短く単調なリフにとどまることが多い中、このソロではギターが完全に主導権を握り、純粋な音楽的高揚を生み出しています。

パンク終焉期において、即興的かつクールな演奏を残した1曲です。

おすすめの聴きかた

Generation Xはアルバム1枚で完結している名盤です。聴くときには1曲目からラストまで「通し」で聴くことをお勧めします。歴史的名盤のほとんどは、アルバム単位で作品が完結しており、映画を観るように「通し」で聴くのが基本です。

本作はパンク後期のハードロック寄りの作品ですが、ジャンルの特性上、高音質とはいえません。音像はやや密集しており、明瞭さに欠ける部分もあります。その分、クリアでバランスの取れた再生が得られるAirPodsとの相性が良く、演奏の勢いを自然な音で楽しめます。

一般的なロックのように音圧や躍動感を重視したリスニング環境でなくても、十分に作品の本質を感じることができると思います。

あとがき(Generation X)

本作Generation Xは、わたしがパンクを聴き始めたころに輸入盤で入手したアルバムです。

当時、ロンドン第1世代のパンク・バンドと比べて「ずいぶんとハードロック寄りだな」と感じたのを覚えています。黄金色のイメージが強いアルバム・ジャケットも印象的でした。

ロックを聴く年月を重ねるうちに、評価が変わっていく作品も多い中で、本作Generation Xは今でも時々再生しています。パンクに馴染みのない方にも届きやすいアルバムだと思います。

ストレートで開放感のある本作は、晴れた日のドライブにもよく似合う1枚です。

あなたにとっても、お気に入りの1枚になれば嬉しいです。

この記事を書いた人

一生の中で、このアルバムに出会えてよかった

rock-streetsでは、わたしの大切なアルバムを、わたしの言葉で伝えています。
ロックであれ、ヘヴィメタであれ、感情を揺さぶる音楽は「芸術」と考えています。

Rockに限らず、クラシックも紹介していきます

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